アルプススタンドのはしの方@イオンシネマ板橋 2020/7/8

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2020年7月24日(金)から公開される作品なのだが、その20日ほど前の7月4日(土)に先行上映が行われた。舞台版は観ていないが、昨年6月にナタリーに載った映画化の記事を見たときから、気になって気になってしょうがない状態だったので、早速その先行上映で鑑賞した。

何故気になったのか?というと、『脇役』にスポットを当てた映画だと思ったからだ。ストーリーの大枠は、野球にあまり興味のなさそうな高校生が、自分たちの高校が甲子園に出場したことから、応援に行く(というか連れてこられる)。吹奏楽部を筆頭にベンチに入れなかった野球部員、生徒や保護者達が応援している客席からちょっと離れた「アルプススタンドのはしの方」。そこであまり野球に興味のなさそうな高校生達が、スタンドに目をやりながら・・・。という感じ。

メインキャストの二人の女の子に見覚えがある。TBS系で放送されたTVドラマ『中学聖日記』で脇役だった子達だ。実際に脇役だった子が主役になる。そして野球部が主役になるはずの甲子園で「アルプススタンドのはしの方」にいる脇役達にスポットが当たる。極個人的に感じる『メタ的要素』が気になりポイントとなった。

若干のネタバレになるが、予告を見てわかる通り、マウンドは一切描写されない。本当に「アルプススタンドのはしの方」にフォーカスを当てた作品だ。ん?これと似た構成のもの・・・「桐島、部活やめるってよ」っぽい。そう、物語の内部で注目されている要素『野球部』や『桐島』自体を一切描写せずに、その周囲で起こっていることを物語のメインにしている。

こういう構成の作品は他にもいろいろあるが、運動部の方がヒエラルキーが高めな高校を舞台にした作品という点も共通する。「桐島」よりメインキャストは少ないし、あちらは群像劇なのに対して、こちらは演劇発であることもあり、ほぼ「アルプススタンドのはしの方」を舞台としたワンシチュエーションの作品である点も違うが、決定的に違うのは、観劇後の観客の心持ちだろう。

「桐島」は、まあスッキリする部分もあるにはあるが、青春時代のモヤモヤを追体験できるという意味で秀逸ではある。それに比べて「アルプススタンドのはしの方」はスカッとさわやかな青春を感じさせて、映画館を出るときの足取りが軽くなる、炭酸飲料のような作品なのだ。

夏の甲子園も中止になってしまった2020年夏。あれはしちゃダメ。これはするな。自粛しろというご時世に対して、スカッと気持ちがよくなる「アルプススタンドのはしの方」のような作品は、いろんな人に見て欲しい。

蛇足だが、こんな爽やか映画の監督はピンク映画をよく撮っている城定秀夫なのは、劇中外のビックリポイントである。


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