Fukushima 50 @新宿ピカデリー 2020/3/6

タイトルの『Fukushima 50』とは、東日本大震災における福島原発事故の際に、原発に残り対応に奮闘した現場の作業員たちのことを海外メディアが報じた際に用いた呼称「Fukushima 50」からきている。現場の臨場感や、スポットの当たる個々人の思いなど、いろいろ魅せる要素もあり、俳優陣の演技が観る側を引き込む力のある映画であった。

しかし、どうも好きになれない。いい話に持って行くため家族要素に若干の胡散臭さを感じなくもなかったが、これはまあ許容範囲。最も問題なのは、敵を作るための演出と、都合の悪い情報をネグること、そして、何故だかよくわからない米国・米軍へのおべっかである。「最も」と言いつつ3点も挙げてしまったが。

敵という意味では、責任を取る気はないが、現場に無理難題をふっかけてくる東電上層部役の段田安則と篠井英介はよい演技だったと思う。しかし、佐野史郎の演じる総理(菅直人と明記してないところが姑息)は行動が短絡的すぎないだろうか。物語の主体は作業員たちとその家族である以上、東電本店や政府側に時間が使えないし、端的に敵を作った方がやりやすいからなのだろう。そしてあの切羽詰まった状況の中で直接的に役に立たない上役はただの邪魔者でしかなかったのも実際の心情としては理解できる。だが、一民間企業が日本の半分を居住不能にするかもしれない事態を招いたのは事実で、それを個々人の責任感に任せるしかなかったと思うと空恐ろしい。

事実をネグっているのでは?と思ったのは、7mを超す津波が来ることを現場が全く想像できていなかったという描写のときに吉田所長にフォーカスが当たってなかった点だ。吉田所長は、2010年からの所長就任前に15m級の津波がくる可能性を上層部に報告しているという事実がある。知っていたはずの吉田所長や東電上層部を外して、さも誰も知らない・想像できないというのは、卑怯な表現と言わざるを得ない。こういう表現があると、同じように他にも意図的に描写しなかったことがあっても不思議ではない。戦国時代を描いた大河ドラマであれば、いろいろな想像や制作側の意図をエンタメとして観られるが、まだ10年も経っていなく多くの当事者がいるこの題材で、この手法は酷いとしか言えない。

そして、脈絡なく挿入される米国側の対応と最終的なトモダチ作戦のくだりは全く必要がなく『キング・オブ・蛇足』だ。シンゴジラのように介入してくる「世界の警察面(づら)・USA」なら物語の要素として必要だが、この演出は米国や米軍へのおべっかにしか見えない。白井聡の『国体論 菊と星条旗』で指摘されているものが表出していると思うと暗澹たる思いになってくる。海外版予告がYoutubeで公開されているし、『Fukushima 50』という表現自体が海外産だから、アメリカに媚び売って海外配給しやすくしようという意図かもしれんが、逆に働くようにしか思えない。

ちなみに、この時のアメリカ軍は天災からの事故だったから人道的支援をしてくれたが、他の国との武力衝突などであればどう動くかは予測不能だ。日本国内のアメリカ軍には日本を守る義務はないのだからね。

ついでに、福島県民の声を代弁する役割となるダンカンが演じる新聞記者と原発職員・伊崎(佐藤浩市)のご近所さん役の泉谷しげるの演技が田舎っぺ感が過剰な上に演技が臭すぎるのも鼻につく。

いろいろ書いたが、もう本当に全般的にプロパガンダ色が強すぎて気味が悪い。劇中、東京オリンピックを「復興五輪」としているとのテロップを恥ずかしげもなく出していくあたりも最悪である。ああ、問題点がまた増えてしまった・・・。

それでも、やっぱり役者の演技はいい。それに生活感というか、生きてる多数の人間があの危機の現場にいたことを感じさせるエピソードは知っておくべきことだと感じた。特に安田成美の演じる総務課(部?)勤めの人は、前線には立たないが、いないと現場が回らないという役回りとして必要不可欠だったのだろう。

それに加えて、311を扱った別作品「太陽の蓋」でも似たような役回りを演じている中村ゆりが非常にGood。キレイな人の物憂げな表情はいいよね。(他にも 両作品に出演してるのは阿南健治)

って感じの作品だった。 良いところもあるし、個人的には賛否の「否」が多い作品であったが、観ないと批判もできないので、観るべき作品かなぁとは思う。

それと、感動ポルノでほぼ2時間泣きっぱなしになりたい低脳な人には、ほぼオススメしたい作品ですね。

蛇足で映画の評価ではないが、FilMarkの評価スコアが高すぎるので、変だなぁ?と思っていたら、試写会さえやってない時期に評価点(スコア)が5点満点中の4点程度でコメントがないレビューが多数投稿されている。うーーん、工作臭がするという意味でも、胡散臭い。

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