偶然と想像@東京フィルメックス 2021/10/30

第22回東京フィルメックスの開会式とオープニング上映に行って観たのが『偶然と想像』(英題:Wheel of Fortune and Fantasy)。

「偶然」という共通の主題を持つ、それぞれ異なる3つの短編から成るアンソロジー作品。登場人物たちの交わす会話はどんどん掘り下げられていき、いつしか全く別の地点に帰着する。

『偶然と想像』 Wheel of Fortune and Fantasy | 第22回「東京フィルメックス」

ネタバレせずに端的に説明していてわかりやすいのが、この東京フィルメックスの作品紹介文。ただしもう一つの『想像』がないのが惜しい。偶然の出会いなり、事象なりで起こった内容と人の想像が両輪駆動の車輪や、噛み合った歯車のように自体を進展させて『全く別の地点に帰着する』のだ。

濱口竜介監督の作品は、2021年11月現在時点でも公開中の『ドライブ・マイ・カー』は179分と3時間もあり、前々作の「寝ても覚めても」も119分とやはり長い。他にも「ハッピーアワー」317分、「親密さ」255分と超長編を撮ることでも知られており、ベルリンやベネチアなどのヨーロッパの映画祭で評価が高いことが、かえって観る側のハードルを上げて忌避している人がいるのではないかと、一ファンとして考えてしまう。

そんな人達に観て欲しいのがこの『偶然と想像』だ。120分と最近の映画としてはちょっと長めに見えるが、短編3つなので個々の作品は40分程度。どの話も軽く、ほろ苦く、心地よい。物語の開始から難しいことなく話に入り込めて、発生する『偶然』(ほとんどの場合、あとから偶然とわかったりする)と登場人物たちの『想像』が共同作業で紡がれていき、ある種の滑稽さと悲しさと希望が入り交じってちょうど良い頃合いに終わる。軽妙洒脱で非常に気持ちよく観やすい映画だ。

偶然と想像(Wheel of Fortune and Fantasy)予告

私はここ数年、年300本以上の映画を観ており、知り合いから「オススメ映画は?」と聞かれることも増えた。そんな時は相談者の趣味がわからないため誰でも面白いと思えるような、映像体験としてスゴイものや思わぬ結末に至るようなミステリー色の強い作品を挙げることが多くなる。今で言えば「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」「DUNE/ デューン 砂の惑星」などになる。実際は「コレクティブ 国家の嘘」「由宇子の天秤」「空白」などを推したいのだが、ハードル高めで、説教臭く感じる人もいそうで受け入れられるのか心配なのだ。 そんな中『偶然と想像』 は無難な路線でなく誰にでも(子ども以外であれば)太鼓判を押して薦めたくなった。12月17日公開と言うことは、お正月映画(表現古っ)のオススメとして私の救世主となってくれるだろう。ただし、ちょっと問題なのは上映館が少なく東京ではBunkamuraル・シネマだけなんだよなぁ。勿体ない…。

と思ったら、どうも劇場公開と同時に配信も行うらしい。コロナ禍以降の劇場公開と動画配信の関係はブラック・ウィドウ問題※がもっとも顕著な事例だが、 『偶然と想像』の配給元である「Incline」が開設する配信プラットフォーム『Reel』では配信の売上の一部を上映劇場にも分配するとのこと。大画面と良い音響が整備された劇場で観賞するのに越したことはないが、時間や距離的問題でどうしても観られない人には非常によい取り組みと言える。

ちなみに一番上の写真は東京フィルメックスの上映前の風景。舞台挨拶とかはマスコミ以外は撮影不可だったため、なんとも淋しげな写真となってしまった。

映画『偶然と想像』キャストコメント

公開日にYoutubeに上げられたキャストコメントは 東京フィルメックスでの舞台挨拶時の衣装なので、その時撮ったのだろうな。

※ ブラック・ウィドウ問題とは …スカーレット・ヨハンソンとディズニー(マーベルの親会社)との訴訟ざたではなく、TOHOシネマズ等の大手シネコンで『 ブラック・ウィドウ 』が公開されなかった問題。これはディズニーの『ムーラン』『ソウルフルワールド』という公開予定作がコロナ禍の影響でディズニーの動画配信サービス「ディズニー+」での配信のみとなり、それが劇場側にたいした相談もなく決定したと思われることが原因のよう。 特に『ムーラン』については劇場ポスターや予告、無料冊子などで大々的に宣伝してたにもかかわらず、配信に持って行かれた訳だから劇場側は怒り心頭だったであろう。これによってTOHOシネマズ等の大手シネコンでは劇場公開と同時配信を行うこととなった『ラーヤと龍の王国』『 ブラック・ウィドウ 』を公開しないこととなった。この騒動については下記の2記事に参照していただきたい。

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