蒲田前奏曲@ヒューマントラストシネマ渋谷 2020/9/15

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正式公開前の先行上映にて鑑賞。以前に劇場で観た「月極オトコトモダチ」が好きで同作の穐山茉由監督が参加してるオムニバス作品ということもあり、関西でのイベント上映のニュースが出た頃から見たい見たいと思ってた。ほかに参加してる監督の作品も見たことがあり、そこも興味ポイント。東京蒲田を舞台に蒲田マチ子という売れない俳優(女優)を主軸として女性性にフォーカスを当てた4つのオムニバス作品で構成されている。「蒲田前奏曲」ってネーミングは当然、「蒲田行進曲」から来ているのだろうが、直接関連があるわけではない。この作品は9月25日が正式な公開日なので、ネタバレ的要素はできるだけ書かないようにしていきたい。

女性に目を向けたオムニバスといえば、最近だと「21世紀の女の子」を思い浮かぶ人も多いだろう。あれはあれで尖っていて、おもしろかったのだが、全作品が女性監督で、一作品の時間が短いこともあり、タイトルにもある『女の子』を全面に出した短期決戦型のガチンコバトルというかキャットファイトが繰り広げられるので、見てるこっちがヘトヘトになってしまう映画であった。

これに比べて、「蒲田前奏曲」は117分、1作品20分以上はある(と思われる。筆者の主観)ので、ヘトヘトになることなく、しっかりと一つ一つの作品を観ることができる。最後の渡辺紘文監督作だけはノリが違いすぎてエキセントリックではあるが、前の3作については観客をしっかりと世界観に引き込んでくれてドラマとしてもしっかり観せてくれるし、蒲田の街や女性の置かれている状況とそこに対するさまざまアプローチも腑に落ちる形に落とし込んでくれている。そして前の3作を観て感性が暖まっていれば、渡辺監督のエキセントリックな作品が来ても、観てる側は受け止める準備ができているだろう、面白く観ることが可能になっている。(まあ、渡辺監督のポールマッカートニーのライブを観に行く話の映画を面白く観させてもらった身からすると、単体でも面白いけども。)

ヒューマントラストシネマ渋谷の巨大ポスター

蒲田前奏曲は4人の監督、いや、スタッフやキャスト、観客をも含めたアンサンブルで奏でられていた。オムニバスというと、テーマは統一されているが好き勝手しすぎてバラバラになるか、話は通っているが、ガチガチに構成されて監督ごとの独自性が霞んでしまうかのどちらかになっている場合が多い印象があり、「オムニバスってなんなんすかね、個々の監督作で良くないですか?あれ。」という感じのありがちな批判が出てきそうだが、各作品の表現と順番が絶妙なバランスで観客に攻めてきて連作であることの効果を最大限に発揮している。オムニバス映画にありがちな批判を飛び越すオムニバスにしかできない味わいのある構成が秀逸であった。観に行く人は各監督や役者目当てで観に行くのだろうが、各作品を別々のものとせず、選り好みをしないフラットな視点で見て欲しい映画。また、先行上映だったので、会場は映画好きのおっさんが多かったが、出来るだけ女性に、そして女性に連れてこられる男性に観て欲しい作品。

余談になるが、3作目の劇中に出てくる二ノ宮隆太郎(映画監督。今作では俳優をしてる。映画『糸』にもちょい役で出てる)の映画に瀧内公美さんと松林うららさんが出るのを、ひっそりと待ちたいと思う。

9月の最終日(つまり30日)にキネカ大森で上映された舞台挨拶付きの回で再度鑑賞。複数回見ると気になっていた点をじっくり見たり、見逃していた要素に気づいたりと何度噛んでもおいしい作品であることを認識できた。前奏曲があるなら、(行進曲はすでにあるので)協奏曲や交響曲もできるし、なんなら街を変える手もあるので、続編的なものも作って欲しいなぁ。


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